1. はじめに
6. おわりに / 注
1. はじめに
イギリスのカントリーサイドは美しい。そこにはイギリスの素顔がある。絵画のような風景がひろがる。というように、イギリスのカントリーサイドは賞賛される。そして日本からのツーリストもイギリスのカントリーサイドを歩くことが、大きなテーマとなりつつある。当のイギリス国内でも、カントリーサイドへの関心はとても高い。1995年にカントリーサイド・コミッションがイングランドで行った調査によれば、カントリーサイドに遊びに行くか否かにかかわらず、93%の人がカントリーサイドは価値があると考え、91%の人が次の世代のために社会はカントリーサイドを保護する道徳的義務をもつと信じているという1)。
本稿では、イギリスのカントリーサイドをめぐる文化が、観光産業の興隆とどのようにかかわるのかを論じる。そこで、まずイギリスのカントリーサイドのイメージが歴史的にどのように形成されたのかを粗描する。そして、現在のカントリーサイドへの高い関心がどのような背景に生まれたのか、ツーリストはカントリーサイドにどのように接するのか、観光のためカントリーサイドがどのように演出されているのか、という点について、それぞれ考察していく。最後に、変容しつつあるイギリスのカントリーサイドの概念をめぐる議論を紹介したい。