以下の絵図・鳥瞰図はすべて個人的に管理しているもので,縮小率・圧縮率は同一です。
大きさの違いが実感できると思います。画像の無断転載は禁じます。
「伊香保温泉名所一覧」江戸期
・文潭図・豊国画
石段街を正面に描く定番の構図で,建物は類型的に描かれている。背景中央の山並みは榛名山・二ツ岳。
「伊香保温泉名所一覧」江戸期
・古久屋蔵版
これに類似した絵図は,数多く出版されている。
「群馬県下伊香保鉱泉場略図」 明治14年(1881)
・編輯/篠田仙果・出版/伊香保廉盟舎中
伊香保神社は仮殿となっていて,伊香保八景(伊香保沼の杜若,二ツ岳の雪,物聞山の時鳥,上の山の月,高根の鹿,猿沢の猿,関屋の雲,円山のツツジ)が示されている。左下の赤は手彩色でツツジ。篠田仙果は伊香保の案内書の出版にもかかわっている。
「上野伊香保鉱泉場市街名所全図」 明治16年(1883)
・編輯出版/長谷川忠兵衛(東京)
石段に湯樋がみえる。伊香保八景(伊香保沼の杜若,二ツ岳の雪,物聞山の時鳥,上の山の月,高根の鹿,猿沢の猿,関屋の雪,円山のつつじ)が二重の枠で括られている。長谷川忠兵衛は『諸国温泉遊覧記』なども公刊している。
「伊香保鉱泉場市街名所略図」 明治17年(1884)
・編輯画工出版/吉田直次郎(東京)・発売/森田与三郎(伊香保)
編輯者は異なるが,上の明治16年版と近似している。右下の案内文も仮名遣いに違いがあるが,内容は全く同じである。
「上州伊香保礦線場名所全図」 明治18年(1885)
・編輯出版/正田治兵(東京)・売捌/森田与三郎ほか4名
下欄には入浴宿の一覧があり,69軒の宿が並んでいる。
「上州伊香保礦泉場名所全図」 明治25年(1892)
・印刷発行/町田太郎(東京)
左手中央に電信郵便局があり,雲間に電柱がみえる。背後の山並みには,駿河の富士や浅間山も描かれている。下欄には43軒の入浴宿が並ぶ。
「伊香保礦泉明細全図」 明治34年(1901)
・印刷発行/町田太三郎(東京)・町栄堂印刷部・刻/太田翠嶹
石段沿いに小規模旅館と店舗が建ち並び,奥に大規模旅館があるという温泉街の基本的な景観構成はほとんど変化がない。左手中央に電信郵便局があり,前橋方面から電線が伸びている。
「上州伊香保温泉場真景」 明治37年(1904)
・発行編輯/山田治衛門(東京)・印刷/山田市太郎・斎藤静三(東京)
屋根に旅館名が示されている。別枠に描かれているのは,右上から時計回りに榛名湖,御陰の松,弁天の滝,坂東橋,常磐の水,九折岩,七重の滝,猿沢橋。
「上州伊香保温泉場真図」 明治41年(1908)
・著作発行/山田治衛門(東京)・著作/大塚政五郎(伊香保)・印刷/吉田印刷所・写生/古耕
右上に水力発電所があり,石段街にも電柱が描かれている。温泉街の東端は,左下に描かれている物聞橋である。
明治前期までは,石段街が図の右上から左下に向けて配置されるが,明治後期になると,石段街の外部にも諸施設の立地が広がり,図の左下に新地を収めるため,石段街の向きが左上から右下へと変更される。
「上州伊香保温泉場全景」 明治44年(1911)
・印刷発行/山内只七(東京)・製版/群山堂写真製版部・発行/昇陽社
左下には前年に開通した伊香保電車の停車場が描かれている。タテ47cm・ヨコ64cmの大きさで,写実的かつ精緻な描写であり,絵はがきの景観ともよく対応する。この図を製版した群山堂写真製版部は,熱海温泉の図も出版している。
「上州伊香保温泉場全景」 大正8年(1919)
・著作発行/桜井建雄(東京)・印刷/桜井印刷所(東京)
左下の停車場付近には,八千代園や劇場があり,木暮武太夫の別館が建ち建ち並ぶ。物聞橋以東にも温泉街が広がっている。
文献:関戸明子(2002)「鳥瞰図に描かれた伊香保温泉の景観」えりあぐんま8(群馬地理学会),23-40頁
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2012年3月更新